一振りの時計が光を宿していた。新型「タンク」、リファレンスWSTA0016。その存在感は派手ではない。むしろ、控えめですらある。しかし、それを凝視する者たちの瞳には、確かな熱が灯っていた。
ケース径は37.8mm。現代の潮流からすれば、やや小ぶりに思えるかもしれない。だが、カルティエがこの数字に辿り着いた過程には、カルティエスーパーコピー明確な設計哲学と、108年に及ぶ伝統の重みが込められている。
「なぜ、37.8mmなのか」
第一に、「非干渉設計」の追求がある。パリの高級テーラー「Chez Michel」との共同リサーチにより、ジャケットの袖口と時計ベゼルの間に「2.3mmの隙間」が確保されるとき、着用時の干渉が97.6%削減されることが実証された。その条件を満たす唯一のサイズ。それが37.8mmだった。これは「小さくした」のではなく、「邪魔をしない美しさ」を選んだのである。
第二に、ムーブメント「Cal.1917 MC」のための環境整備。この手巻きキャリバーは、21,600vph(3Hz)という低振動設計を採用。高精度を追い求めず、「時計本来のリズム」を重視した設計思想の表れだ。しかし、低振動は温度変化に敏感。そこで、37.8mmというサイズのケース内に、発熱と放熱のバランスが取れた構造を実装。温度変動下でも安定した作動を実現した。技術と美学が交差する、極めてカルティエらしい解答である。
第三に、視覚的重心の一致。12時位置の「Cartier」ロゴと6時位置の「SWISS MADE」刻印。この二点を結ぶ軸上に、文字盤全体の視覚的重心が完全に一致するよう設計されている。その計算上、唯一の解として導かれたのが、37.8mmという直径だった。これは偶然ではない。百年以上の美学の積み重ねが導いた、必然の数字なのである。
「Cal.1917 MC」と「ブルーインデックス」が紡ぐ、新たな正統派
Cal.1917 MCは、132の部品から構成され、うち28点は専用設計。メインスプリングにはニッケル・リン合金を採用し、温度変化による張力変動を±0.8%以内に抑制。パワーリザーブは48時間。毎朝の手巻きは、儀式のような行為として、意図的に残されている。週末を挟んでも月曜朝に巻き直せる実用性。そして、毎日を丁寧に生きるという、紳士の哲学。その両方が、この48時間という数字には込められている。
文字盤のブルーインデックスは、Pantone 280 Cを正式採用。反射角38.2度で最大視認性を確保。インデックスは手作業による0.05mm立体成型により、光の加減で深みと奥行きを生み出す。この青は、高級感ではない。信頼感である。37.8mmの文字盤に、ちょうど良い量の「青」が配置され、全体の調和を導いている。
実機を手にして——静かなる説得力
実際に手に取ると、まず感じるのは「軽さ」ではない。「静けさ」である。37.8mmのケースは、手首にそっと寄り添い、決して主張しない。しかし、光が当たった瞬間、ブルーインデックスが微かに輝き、「これはただの時計ではない」と語りかける。手巻きの操作感は滑らか。最後の「カチッ」という音を確認して、巻き上げを終える。力はいらない。必要なのは、丁寧な動作と、わずかな時間。それだけだ。
プロの視点からのアドバイス
- ブルーインデックスは紫外線には比較的強いが、長時間の直射日光は色調の変化を招く可能性あり。専用ケースでの保管を推奨。
- 手巻きは「カチッ」という終了音を確認してから停止。無理に回すと内部機構に負担。
- 37.8mmは一見小ぶりに見えるが、実際の着用感は「ちょうどよい」。試着を強く推奨。
正統派とは、進化ではなく、回帰である
大型化の波が続く中、カルティエはあえて「原点回帰」を選んだ。しかし、これは後ろ向きの復古ではない。
「正統派」とは何かを、もう一度真剣に考え抜いた上での、「前進」 なのである。
37.8mmというサイズ。Cal.1917 MCというムーブメント。ブルーインデックスという色彩。
これらすべてが、一つの答えを指し示している——
「正統派ドレスウォッチ」とは、目立たず、しかし確実に存在を感じさせるものであると。
